坂の上の雲

文庫本にして8巻にもなる司馬遼太郎の作品を読み終えた。前に読み始めた事があるのだが、途中で、日清戦争に入るあたりで放り出したのだが、NHKがドラマ化するというニュースに触発されて、なんとかもう一度読む気を起こす事ができたという訳だ。

日清戦争で勝ち、日露戦争では陸上と海上の両方の戦いで勝ちを手中にした訳だが、戦いの前線の人達が何を考えながら行動したのか、極めて鮮明に伝わってくる素晴らしい書だと思う。

物量ではロシアに及ばない日本が如何にして戦い抜いたのか。決して奇抜な戦略が敵の裏をかいたとかいう訳では無かった事がよくわかる。筆者が登場人物に語らせているが、半分は運、残り半分も運、但し残り半分はやるべきことをやった事により導くことができたものという訳だ。

それでも不思議な事に、逆の見方をすると、何故ロシアは負けたのか、あるいは何故乃木大将がことごとく敵を攻め立てる事に失敗したのか、ということに対してははっきりと見て取れる様々な問題が浮かび上がる。

力が均衡する中で勝利するという事は、完璧に練られたと思われる作戦が壷にはまるという事よりも、如何にして馬鹿げた失敗をしないか、という事の方がはるかに勝敗を決定する比重が高いのだろう。

例えば、当初乃木大将は前線がどういう惨状にあるのか知らないで攻撃指示が出されていたという事、ロジェストベンスキーは航海の中兵士の士気を意に介していなかった事等だ。

もっと色々あったなとは思っているのだが、上手く思い出す事ができないな。今後いつかもう一度斜め読みしながら、纏めて見たい。