思考の整理学

アイディアを産み出す事に王道は無いのだろうが、筆者が培ってきたやり方を元にして数々の考え方が纏められている。1986年に執筆された本なのだが、その示唆するところは今日では全く輝きを失っていない。また話のいくつは脳科学者の茂木健一郎と同じようなことにも触れており、英文学者という専門領域を超えた見識を伺うことができる。
6章から構成されているのだが、各章にタイトルが無いのは残念なのだが、その章毎に何を伝えようとしているのかをメモとしてみる。

1 本書の目的
学校で手取り足取り教えられただけではともすれば与えられた課題を与えられたやり方で正しく解くいわばグライダー型の人間になってしまうが、飛行機のようになるにはどうすればよいかを考える書。

2 思考しアイディアを出す要諦の客観的な理解
素材を蓄えてヒントという酵素を与えてあとは時が来るのを待つというプロセスを醗酵という表現に例える。「見つめるナベは煮えない」、つまり大きなテーマは根を詰めて考えるだけでは駄目で、長い間寝かせる事によって熟成するというもの。

3 素材をどう蓄積するか、筆者が使っている手法を解説
手法は特に目新しく無いが、調べものをするときには「何を何のために調べるのかを明確にして情報収集する」とう示唆は重要なポイントだ。

4 醗酵を促す準備プロセス
睡眠をとること(レム睡眠中に脳が素材を整理する)、些細なことは忘れる、メモは取らない(価値があることならメモを取らなくとも忘れない)、とにかく書いてみるあるいは聞いてもらう。

5 醗酵を進める為のノウハウ
中国の欧陽修という人物が残した言葉「三上」は良いアイディア生まれやすい状況で、馬上、枕上、厠上の事。同氏は「三多」という言葉も残し、看多(多くの本を読む)、做多(多く文を作ること)、商量多(多く工夫し、推敲すること)、により文章を書くことを上達できるという。更に筆者は「三中」といって、無我夢中、散歩中、入浴中がいい考えが浮かぶ状態だとする。

6 これまでの章に収まらなかったものが書かれてある感じ。