かぜうどん

冬の夜、うどんやが屋台を引いていく。
博打をやっている連中がヒソヒソ声でうどんを注文する。あまり目立ちたくないということだ。十杯も頼んでお釣りもいらない、これからも食べてくれる、という美味しい商売になった。さて次にまたヒソヒソ声で注文する客が来たので、また同じように事情のある特別なお客なのだろうかと想像すると、
「おい、うどん屋。お前も風邪なのか。」

十杯も頼む客の事、サゲの意味、これも一度聞いただけでは判らなかった。博打打ちのシーンなどは「博打」という言葉も出ないのだから想像を働かせるしかない。