イノベーションへの解 実践編
イノベーションのジレンマから始まってシリーズ第4作になる。クリステンセン氏はイノサイトというコンサル会社を興していたのですね。そこでの実績や経験を経ての事なので内容には重みを感じる。
こうした米国の理論書は読む事が結構重いので、まずは目次に目を通した後はFAQに目を通すと、興味を引く解説がある。
イノベーションは実際には多くの人が考えているよりも定型的なものだ。一定のプロセスに従い、パターンを活用することで、誰でも自分の内にあるイノベーターの力を解放することができる。
そう、まさにこういった答えを誰しも求めているのだが・・・と眉唾の思いも持ちながら少しずつ読み下す。
アイディアは
- 消費の制約条件を発見したら、その障害条件を取り除くイノベーションを追求する
- 過剰満足が起きている性能特性において「必要にして十分」な性能を安価に提供するビジネスモデルを導入する
- 「片付けるべき用事」にフォーカスする
といった角度から見つけると提唱する。なるほど、と頷く一方で、そのプロセスを実践しようとしたら、スキル、経験、市場との良好な関係、などなど、困難が見えてくるではないか。
片付けるべき用事(job_to_be_done)、という事だけをとっても単純では無い。要は、顧客のニーズ、という意味だと理解したが、これこそ多くの会社が知りたいと願っている課題だろう。本書では次のようなアプローチを提示している。
- チームによるブレーンストーミング
- フォーカス・グループ/顧客との軽いやり取り
- 顧客の観察
- 代償行動(回避策)の分析
- 顧客ケーススタディの調査
実行する環境があるか、という課題もあるし、一朝一夕には解決しない。
考えるヒントと示唆には富んでいる良書だ。が、実践編、というにはまだまだ程遠いと言わざるを得ない。本書をフレームワークとして、フォーカス・グループなどの実践ノウハウを突き詰めていかないと。
市場をセグメント化するのはマーケティングの基礎とも言えるが、単純に人口動態などでそれをやってしまっては意味が無い、顧客の「用事」こそが重要だという理論は、何の疑問も無くうなずける。
本書でも引用されているが、セオドア・レビットが述べている「顧客は1/4インチのドリルが欲しいわけではない。1/4インチの穴が欲しいのだ。」という根源的なマーケティングの発想と同じ意味と理解した。
もっとキチンと読み込むべきか、そこそこ理解した積もりになって実践に当てはめて試行錯誤した方がいいのか、難しい。