ノルウェイの森

新刊の発行やイスラエルでの受賞と講演などで話題になっている村上春樹だが、これまで読んだことが無いので何か読んでみようと本書を選ぶ。

読みやすい作品で一気に読み進んだ。ついのめり込んでしまう。登場人物が絞り込まれているので展開が飲み込みやすいし、会話や人物描写が多いので作品の中に入っていきやすい。人気が高いのも理解できる。

何か重苦しいものを心の中に持っていて、周りの人の影響を受けながら揺れ動くような精神状態の描写は、夏目漱石の作品に通じるようなところがある。村上春樹夏目漱石の影響を受けているのではないだろうか。

エンディングで主人公が彼女に「あなたは今どこにいるの?」と問い掛けられてそれに答えられない心理状況になっている。夏目漱石の「三四郎」で、美禰子が「ストレイシープ」という言葉を口にしていた。昔読んでから随分日が経つのでどういう状況でそれが使われていたのか忘れてしまったが、三四郎の揺れ動く心を美禰子が感じ取っていたように記憶する。ノルウェイの森のエンディングはそれと良く似ている。