青菜

植木屋のオヤジがお屋敷の旦那さんに酒をご馳走になる。柳陰という酒なのだが、みりんを焼酎で割ったもので冷やして飲むのが良いらしい。その酒の肴には鯉の洗いが出されて植木屋も感動している。
更に青菜を出すように旦那さんが奥さんに言うと、「鞍馬山から牛若丸がでて、名を九郎判官(ほうがん)」と告げる。菜は食ってしまってもう無い、と暗に旦那だけに判るように洒落た伝え方をしたのだ。それを受けて旦那さんも「義経」と返事をする。よしとしよう、という意味らしい。
その粋なやり取りに感動した植木屋、早速真似をしてみようとする。知人を家に引き入れると、普通の酒とおからという代わり映えのしない肴になってしまうのは仕方ない。女房に青菜を出すように言うと、「鞍馬山から牛若丸がでて、名を九郎判官”義経”」と最後まで言ってしまう。植木屋も言葉を失って、「弁慶」と口走るだけだった。