ライフサイクルイノベーション

どんな製品であろうといつかは類似製品が蔓延する状況になり価格低下を導き利益が出なくなっていく。そうした時でも何らかの差別化を図り利益を生む為に如何にすれば良いかが、どんな企業にも重要な課題となる。それを解決する事がイノベーションになるのだが、本書では製品のライフサイクルに応じてイノベーションとしてとるべき手段が異なると説く。

事業の区分として「コンプレックス・システム」と「ボリューム・オペレーション」というアーキテクチャに2分して考えることができる。

コンプレックスス型のアーキテクチャでは、複雑な問題を解決するコンサルティング的要素が大きい個別ソリューションが提供される。これとは対照的にボリューム・オペレーションは、標準化された製品と商取引により大量販売市場でビジネスを遂行することに特化している。

コンプレックス・システムは比較的少数のターゲット顧客が中心にあり、一方ボリュームオペレーションの中心にあるのはテクノロジーである。両者には時系列な関係があり、当初はコンプレックス・システムだったものでも、製品が普及し始めるとボリューム・オペレーション型が台頭し始めやがて優位性を持つようになるのだが、それを基礎に活用してさらに次世代のコンプレックス・システムが生み出される。もちろん、戦略立案においてもどちらをとるのかは決めておかなければならない。
同じ事業アーキテクチャに属する企業の間では差別化による競合が重要となる。それにはイノベーションが必要となる訳だが、製品のライフサイクルに応じて次の4つの大きなカテゴリに分けられる。

  • 製品リーダーシップゾーン
  • 顧客インティマシー・ゾーン
  • オペレーショナル・エクセレンス・ゾーン
  • カテゴリー再生ゾーン


製品リーダーシップゾーン − 多大な研究開発投資と市場リスク


顧客インティマシー・ゾーン

  • 製品ライン拡張イノベーション:既存製品に構造的変更、独立したサブカテゴリーを創出(例:自動車におけるミニバン)
  • 機能強化イノベーション:細かい変更を基盤から離れて実施(例:自動車におけるカーナビ)
  • マーケティングイノベーション:購買プロセスでの差別化(例:TVドラマでの商品の使用)
  • 顧客エクスペリエンス・イノベーション:価値提案が機能ではなく顧客体験に(例:宿泊顧客の新聞の好みを記録しているビジネスホテル)


オペレーショナル・エクセレンス・ゾーン


カテゴリー再生ゾーン

  • 自立再生イノベーション:社内資源を使って成長する新規事業カテゴリーに方向変更
  • 企業買収再生イノベーション:カテゴリー再生を企業合併・買収で実現

また本書は企業活動をコアとコンテキストに分類し、コンテキストの領域からリソースを抜き出してコアに再配分することによって差別化を産み出すイノベーションを実現する、という手法を解く。

コア−コンテキスト分析フレームワーク

  • コア:顧客獲得のための差別化を産み出すプロセス
  • コンテキスト:それ以外のすべてのプロセス
  • ミッション・クリティカル:問題があると即時のリスクがもたらせられるプロセス
  • 非ミッション・クリティカル:それ以外のすべてのプロセス