草枕

山路を登りながら、こう考えた。

有名な文から始まる夏目漱石の代表作品。どことなく気になる存在だったけどこれまで一度も読もうともしなかったのだが、どういった気まぐれからか買い置きしていたものを読むことにした。

薄めの本なのだがなかなか読み進める事ができない。というのも表現が難しい箇所が多くからで、注釈も1ページに何箇所も出てくるので先に進まない。特に主人公の思考を書き表した箇所は、現実離れした描写が多いてじっくり読んでもイメージがわかない。気軽に手にとったのだが結構読了まで時間がかかってしまった。
夏目漱石の真骨頂を理解するのは当分は無理かも知れないな、と。

那美というなんだか掴みどころが無い女性とのやり取りが中心の話だが、「余」という形で語られる主人公は女性に興味を持っているのだが、見透かされているような、もて遊ばれているような、押されぎみの展開だ。
そして場面は、風呂場だったり、寺だったり、池のほとりだったりと、途切れ途切れに変わっていく。

話の最後で、那美が戦地に赴く従弟を電車で見送る際、那美は感情的なそぶりを見せ、そこで主人公は

余が胸中の画面はこの咄嗟の際に成就したのである。

と述べる。
この瞬間だけは、主人公は那美の胸の内を理解できた事の充実感を覚えたかのようだ。