竜馬がゆく(一)

お勧めの図書なんかによく登場するということもあって気に掛けていた本だが、なにせ文庫本で全八巻もあるので、途中で挫折しないものかと気後れしてなかなか手がつかなかった。大河テレビの篤姫坂本竜馬が登場していよいよ興味をそそられたこともあって読み始めることにした。

剣を腕を磨くために江戸に留学し千葉道場に入門。北辰一刀流の免許皆伝まで腕を磨き上げる。黒船来航という幕府と日本全体を震撼させる出来事を前にして坂本竜馬尊王の考えを抱く。そうした折に偶然に長州藩桂小五郎と出会い、安穏としてはいられないという気概で意気投合する。

まだ一巻目なのだが、面白くて読み進んでしまう。何が面白いか。
一つは、坂本竜馬の性格によるもので、言動の先が予測できないことだ。相手が投げかけてきても、それを真っ直ぐに返したりはしない。飄々とやり過ごしてしまうのだが、それも計算に基づいているようであり、コミュニケーション力に優れていると言える。

もう一つは時代背景であり、ペリー来航から始まる明治維新に向けて何かが起きそうな予感を、坂本竜馬だけでなく、桂小五郎土佐藩の若者達が到底一人で向かってどうなるとも思えないような大きなうねりを正面から受け止めていく姿が、読み進めるにつれてじわりと増幅してくれる。