竜馬がゆく(六)

第一次長州征討後、幕府は力を回復しつつあり、長州を打ち滅ぼそうとする機運が高まる。そしてここから竜馬の世界観が現実に結びついていくことになる。日本を救うには薩摩と長州が一体となって幕府を倒し、そこから朝廷にもとに一から政府を立ち上げようという構想だ。
そこでとった行動。まず薩摩を動かす為に西郷に面会し、幕府、長州、薩摩が三つ巴にで争うことに危険性、いづれ外国にそこをつけ込まれる可能性を解いて説得に当たる。次いで、長州の桂とも面会して説き伏せる。そして西郷が長州に同盟を結びに行く段取りまで付けるのだが、直前になって西郷は行くのを止めてしまう。
だが、ここで竜馬は、いきなり犬猿の仲の薩摩と長州の手を握らせるのは無理だったのだと悟る。そこで次の策。長州が欲しがっても幕府の妨害で買い付ける事ができない戦艦や武器を薩摩が用立ててやる。また米不足にになっていた薩摩に長州が米を送ってやる。つまり、実利に訴えかけようという作戦だ。

この竜馬の作戦は、両者のプライドのような所も何とかかいくぐって事が運び、薩長同盟が幕府の知らないところで結ばれる。

さてこの段階で第二次長州征討が始まる。軍事力では幕府軍が勝るのだが、長州の奇策もはまった事もあり、また時の流れには逆らえず、長州の掲げる勤王の旗印の前にもあって、幕府軍は戦うモチベーションを無くし敗勢を余儀なくされ、更には徳川家茂の訃報が伝えられるに至ってはその後の政局がわからなくってしまったので戦いから指揮官が離脱する。
幕府の威信も無くなっていく。


この頃竜馬は長崎に根拠を持ち、貿易の傍ら有事の際には海軍となる亀山社中を薩摩の援助を受けて設立し、船も購入することになる。(この船は嵐の為に沈んでしまうのだが) 自らの夢に一歩近づいた竜馬は部下達にこう語る。

ゆくゆくは亀山社中が百万石程度の藩の実力をつけねばならぬ。それをもって薩長を主導しつつ幕府を倒して新国家を樹立するのだ。幕府を倒して政府ができてもみなは役人になるな。海軍を興して、この亀山社中を世界一の商社にする、そのつもりでやれ。業なかばで倒れてもよい。そのときは目標の方角に向かい、その姿勢で倒れよ。


竜馬は情報通でもあった。でなければ幕府と諸外国の情報もわからず、西郷を説得できなかったかも知れない。情報通という事はそれだけ人脈があった、という事でもある。