HAPPY

山の向こうに幸福があると聞いた男が、山を超えてやってくる。そこで老婆に出会う。老婆曰く。

昔、自分が娘のときに両親も無くし失意の底にあって死のうとした時に老人が現れて、山の向こうに「幸福」という生き物が住んでいてそれに会えば幸福になれるから、一緒に連れて行ってやると言う。しんどい思いをしながらも老人に着いて行くとやがて美しい場所に到着する。そこには「幸福」がいた。老人は更に言う、「幸福」を捕まえるともっと幸せになれる、と。そこで「幸福」を捕まえようとするのだがいくらやっても消えてしまって捕まえることができない。何ヶ月もそれを繰り返した末、自分は既に幸せなのだと気がついた。


桂枝雀自作の落語だ。カール・ブッセの詩「山のあなた」をモチーフにした落語で、いわばその続編とも言えるような内容になっている。
山のあなた」は難しい詩で「幸い」を見つける事ができたのかどうかすらはっきりしない。にも関わらずそれを引用するという事に挑戦し、どうすれば「幸福」を見つける事ができるのか、「幸福」とは何なのか、「幸福」には際限はあるのか、そんなことを問い掛けている素晴らしい作品だ。