夢たまご

食べると夢を見るという「夢たまご」を売り歩いている夢たまご売りがいる。ある男がそれは面白いという訳で、試しに買って食べる。すると夢の世界に入ってしまいそこでは自分が夢たまご売りになっている。夢たまご売りの家に帰って酒を飲んで、女房にちょっかいを出す。本物の夢たまご売りが出てきて怒るところで夢が覚める。
夢が覚めると、本物の夢たまご売りが少し先にいてたまごを売っているのだが、「夢の中だからといって、してはいけないことがあるぞー」

という事は、夢たまご売りは、お客が見る夢を覗いていた事になる。人がどんな夢を見ているのか、もし覗き見できるのだとすると面白いのかも知れないが、心理的にはあまり気持ちがいいものではない。

この作品は桂枝雀の自作のもの。落語というものは夢か現かという自身の心情から生まれたものだそうだ。お腹を抱えて笑うというような内容ではなく、どこか不思議な感覚に浸らされる作品だったが、桂枝雀が求めようとして世界観が表現されているのだろうか。


これで桂枝雀の落語CDを一通り聞き終えた。落語の楽しさが少し判ってきたような気がする。
一つはお話そのもの。登場人物が間が抜けたことを演じたりして、現在の漫才のようなものがある。あるいは、人情を演じるもので、これは現在のドラマのようなものだろう。
もう一つは昔(多くは江戸時代)の風景が見て取れること。かつての生活、娯楽、仕事、そういったことを垣間見る事ができる。
そして、話を通して広がるイメージ。喋りでやり取りしている世界を、自分の頭の中で広げていくと、いつしか自分の経験したことと、そうでない事が、入り混じって浮かんでくる。


さて、次はどういう落語をあたろうかと考えたのだが、季節感を感じながら楽しみたい。例えば「青菜」といったような作品だ。ちょうど麻生芳伸さんが「落語百選」という本で春夏秋冬を分けている。この本を土台にして、季節を味わえる落語を見つけてみたい。百選はちょっと自信が無いので、「四季五十選」という事にしてみようか。運よく音源で聞けるかどうかは判らないので、読むということもOKとしておこう。