二番煎じ

参考:古今亭志ん朝 落語名人会

町内で火事の見張りをする男衆。寒い中を我慢しながらも何とか一回りする。別のメンバーと交代すると、寒くて仕方が無いという訳で、その番小屋でこっそり持ち込んできた酒を飲み、しし鍋も作って食べ始める。
酒も回ってきた頃、役人がちゃんとやってるのか見回りに来る。役人が土瓶の中身を聞くと、それは薬を煎じたものだと言い訳し、鍋の中身は何かと聞くと、薬の口直しだと答える。役人は酒と鍋を味わい、もっと煎じ薬を出せと要求するのだが、自分達の分が無くなってはいけないと、もう無くなったとウソをつく。
そこで役人は、では外を一回りしてくるから二番を煎じておけ、と命令する。


喧嘩と火事は江戸の華、というだけあって江戸は火事が多く、いろは四十八組という火消しの組織があった。それでも十分では無いというので、町の人が見回り役を雇っていて、その人を番太郎、番太郎が詰めている小屋を番小屋と呼んだ。その番太郎は年配の人で元々が道楽者だったりしてあまり真剣に取り組む様子が無く、酒を飲んでは寝てしまうということもあって任せていられない。結局自分たちで見回りをするようになった、という事だ。

見回りに出るのはいいが、その寒くてたまらない情景がよく描けている。
私が子供の頃、寒い時分になると、日の用心と声にしながら拍子木を鳴らしながら、見回りをしている人がいた。地域の青年会の人だったのだろうが、寒い中をご苦労様だったんだなと、今になって感心する。当時子供の頃はあまり寒さは気にならなかったのだろうか、何も感じるところは無かったように記憶する。

その寒いなか見回りの一区切りがついて、ばれたらまずいと思いながらも酒のお燗と鍋にありついてしまう。まるで子供のような根の明るいいたずらのようで、思わず笑ってしまう。落語で面白いと感じるのはこういったネアカな所だ。