竹の水仙

参考:柳家小さん 五代目 −人間国宝 話芸の魅力

飛騨で大工の腕を磨いた甚五郎、棟梁の勧めで京都の大工に勤めにいく。酒が好きでサボってばかりなのだが、宮中の依頼で見事な水仙の彫り物を献上し左の官を授かりその名も売れる。
甚五郎は京都は飽きたとフラリと江戸に向かうがその途中藤沢に宿を取ったときの事。宿の主人、大黒屋金兵衛が宿泊費を払ってくれというのだが無いという、その代わりと自分が竹で彫った水仙を大黒柱に飾らせ、50両でも100両でも売るが良いという。その竹細工の蕾の水仙、水に活けておくと翌日には花が咲く。そして長州藩大名毛利氏の目に留まり、それは左甚五郎作品に違いないから売るように頼まれ、大黒屋は100両で売り渡す。


登場人物の左甚五郎は江戸時代に活躍したというが、実在しない架空の人物だという説もあるそうな。まあそのことは抜きにして、腕の素晴らしさは確かなはずで、たった一輪の水仙の彫刻で官位を得るというのはどういう事だろうか。もっと凄いのは、竹細工の水仙の蕾が開くというのはこれはいくらなんでも信じられないが。。こういう歴史に名を残す人は何かと話に尾鰭がついたりするものなのだろう。

甚五郎の水仙は宮中の人と長州の大名に認められた訳だが、見る目という点では勿論宮中の人が勝る。たった一本の彫刻の素晴らしさを、作者の名前や生い立ちなど全く知らずして見抜くというのは、並大抵では無いはずだ。一方大名の方は高名な作者によるものだというバイアスで見ているが、それでもその作品が甚五郎作だと見抜いたのも相当な事だ。

先日のニュースで、中国清朝時代に英仏連合軍により略奪された「十二支動物像」のうちネズミとウサギ像がオークションに出されて39億円で落札された話があった。見る目があってのことかどうか知る由も無いが、盗品が堂々と売買されているというのはどういう事なのだろうか。もうとっくに時効が過ぎているから良いとでも言うのだろうか。