経営の未来
経営管理の手法が確立してから長い時間が経っているが、このインターネット経済、グローバリゼーションの時代になって、そのパラダイムが既に古くなっているという。そして、小手先で改良してきた経営管理(計画策定、組織づくり、指揮、調整、管理など)にブレークスルーが必要なのだという事だ。
- 作者: ゲイリーハメル
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/02/16
- メディア: ハードカバー
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そこで現代の経営管理が取り組むべき課題とは。
- 規模の大小を問わず、どの企業でも、戦略変更のベースを劇的に加速させること
- 不愉快な情報が階層を上がっていくにつれて無視されたり、大した問題ではないとして切り捨てられたりしないようにするためには、どうすればよいか
- 何百もの新しい戦略案を継続的に生み出す経営管理プロセスを築くにはどうすればよいか
- 衰退に向かっている既存プログラムから未来に焦点を当てたプロジェクトへの資源の再配分を加速するにはどうすればよいか
- イノベーションをすべての社員の日常的な業務にすること
- 社員を奮起させて各自の最高の力を発揮させる魅力的な労働環境を築くこと
- 集中、規律、秩序を犠牲にすることなく管理を減らすことによって社員の自由を拡大するにはどうすればよいか
- 官僚型組織の仕組みではなくコミュニティの精神が人々を結びつける会社を築くにはどうすればよいか
- 組織のすべての人間が感じる使命感を、非凡な貢献の基礎になるように高めるためにはどうすればよいか
こうした課題に真っ向から取り組んだ企業に、ホールフーズ、ゴア、グーグルを挙げてその取り組みを分析する。だが、これらはかなり尖った企業であって、既に管理システムが確立している既存組織はどうすればよいのか?ということになる。
特に適応力をを高めるための基本原理は何か。
- 多様性を生み出す(生命のベンチマーク)
- 資源を柔軟に配分する(市場のベンチマーク)
- 積極的な参加を可能にする(民主主義のベンチマーク)
- 意味の中に勇気を見出す(宗教的信仰のベンチマーク)
- 幸運な発見の確立を高める(都市のベンチマーク)
計画を立てるために、複数のグループを作って、経営管理プロセスを分析するエクササイズを提案する。
- このプロセスの主体は誰か
- このプロセスの目的は何か
- このプロセスには誰が参加できるか
- このプロセスのインプットは何か
- 誰が意思決定の権限を持っているか
- 意思決定の基準は何か
- このプロセスの顧客は誰か
このプロセスの分析を先の原理に反映してどう作り変えるか。
- このプロセスにもっと多様なデータや視点や意見を持ち込むためには、どうすればよいか。
- このプロセスが専門家の叡智だけでなく、市場の叡智を利用するようになるにはどうすればよいか
- このプロセスが異論を抑制するのではなく促すようにするには、このプロセスをどう変えればよいか。
- わが社が目指すべき高次元の目的に関心を集中させるには、このプロセスをどのように利用できるか。
- わが社がより一層エキサイティングで活気ある職場になり、クリエイティブな人材を引き寄せる企業になる助けになるように、このプロセスをつくりかえるにはどうすればよいか。
IBMがEBO(Emerging Business Opportunity)に取り組んだ過程も参考になるところが多い。そして、何よりもこのプロセスが作られた背景、成長を生み出す新規事業がどうして育たないのか、その根本的な原因をとことん追究したところが、マネジメントの仕組みつくりのスタートに重要だったことが判る。