利休にたずねよ

日本語が綺麗で深みがあり、読んでいて引き込まれるように、一気に最後まで読み終えてしまった。

利休にたずねよ

利休にたずねよ

千利休は侘び寂びの世界の茶道に美を追求する事を徹底的に追い求めた人として描かれている。その信念から一歩も引かない、太閤秀吉にもへつらうことが無い、何一つ妥協することのない姿勢を貫き通したというところは結構すさまじい。先日読んだ幕末史では権力欲から改革を進めるが結局目指そうとする理想を持っていなかった人物像が描かれていたが、利休の生き方はもう本当に真っ直ぐとしか表現しようが無い。

何人もの人達との関わりが描かれているが、その中でも黒田官兵衛の事が記憶に鮮明に残った。官兵衛は元々茶道をバカにして相手にしてなかった。所が、秀吉の命令で利休に恥をかかせる一計を立てたところ、利休はそれには微動だにせず受け流したことに感じ入り、茶道に臨機応変の要素があるのは軍略にも役立つことが判ったと、その場で考えを改める。官兵衛もまた利休とは対照的な人物であり、両者を対比させることで、官兵衛の柳のような柔らかさを備えた人柄をくっきりとさせている。