花見酒

参考:落語百選/麻生芳伸/ちくま文庫
   演芸玉手箱 三遊亭小円


男二人が花見に乗じて一儲けしようと企む。向島で花見をしている人達が沢山いるのだが、そこで酒を売れば、自前の酒が無くなった人が買うだろうという魂胆だ。二人は金は持っていないので、後払いで酒を二升調達してそれを樽に入れ二人で担いで行く。
ところが酒のいい匂いに我慢できずに兄貴分が飲みたいと言う。金は払うといって一貫を弟分に渡して一杯飲む。今度は弟分が飲みたいといってさっき貰った一貫を兄貴分に渡して一杯飲む。そんなやり取りを繰り返したあげく、売り物にするはずの酒は一滴も無くなってしまう。
酒が無くなっているのでさぞやお金が儲かっただろうと売上を見ると一貫しか残っていない。


そりゃそうだろう。この会社(?)は売り物を自分のところで全部使い切ってしまったのだから、収入が無いのは当然なのだ。会社の外から眺めると何でもないことなのだが、この落語を聴いているとこの営業(?)の兄弟の視線になって、そうするとなんだか売上が残りそうな気になってくるのが不思議だ。