さらばアメリカ

最初のサブプライム問題の分析と、最後の日本の選択肢の提案は興味深く読んだ。が、中ほどはアメリカが何故国際的に威信が無くなったのかを解説してはいるのだが、記述レベルが高いことと、切り口があちこちに及んでいて、状況を理解している読者を前提としているかのようでもあり、消化不足になってしまった。

さらばアメリカ

さらばアメリカ

それで、サブプライム問題。元々ハイリスクな商品なのにそれを巧みに隠して投資家に売った金融機関の罪だという訳だ。新手の金融商品は、どんなものなのかをはっきり表に出すべきだし、買う側もそれをしっかり評価しなければならない。

  • 投資先が見つからないホームレス・マネーが先進国で行き場を失う
  • 途上国物件はハイリスク、不動産は一等地は高騰しめぼしいものが無い
  • サブプライムローンは12%くらいの高金利の魅力、それを複数束ねて小口債権化した商品化
  • その中に証券大手は良質なローン(プライムローン)を混ぜる
  • それを格付け会社(スタンダード・アンド・プアーズなど)からAAAの評価を受け世界中の投資家に販売
  • 07年夏頃から一部商品が焦げ付き
  • 危ないとみなされた金融機関から預金が引き出され、株価が急落し経営破たん(リーマン・ブラザースなど)

アメリカ一国が世界を牽引する時代ではなくなってきたが、そこで日本がとるべき道は、これまた日本は少子高齢化社会に向かおうとしている中で独力では国際的な存在価値は下がる一方であり、他国とどう折り合いをつけるが重要なテーマになる。その他国とは、中国、EU諸国、ASEANだと言っているが、それはどれも可能性としては正しい選択肢だと思う。
が、それ以前に、日本はどうなりたいのか?というビジョンが無いのが問題ではないか。そういう課題を形成し、ビジョンを語り、国民に投げかけて意見を吸収し、纏め上げることができる人材がいないのだろう。日本の課題はまずそこがスタートなのだとして、大前氏から提言が欲しいところだ。本書のタイトルとは脇道にそれるかな。