フラット化する世界

グリーン革命を読んでその前作のフラット化する世界(原題:The World is Flat)が気になり、ざっと読み返してみる。

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)


フラット化した世界では世界規模であらゆる協業作業がインターネットをベースとして距離を超越して可能になる。この事はグローバルレベルでの全体最適という観点で素晴らしいことだが、一方先進国にとっては諸刃の刃でもあり、自らの仕事が失われるという、アウトソーシングが競争戦略として重要視された頃に散々議論された課題が突きつけられる。
筆者はフラット化という大きな現象を騒ぎ立てるだけでなく、アメリカ人として、フラット化した世界でどう勝ち残るかを考察している点が素晴らしい。

それが「無敵の民」の章に書かれていることであり、無敵の民とは、自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化される事が無い人の事をいい、この人は3つに大別される

  • かけがいの無い、もしくは特化した人々
  • 地元に密着して、錨を下ろしている人々
  • ミドルクラスの仕事をしていた人々

この三番目のミドルクラスが大変で、アウトソース、デジタル化、オートメーション化に流されないための新ミドルクラスに位置付けなければならない。

  • 偉大な共同作業者・まとめ役:他人との共同作業や社内の共同作業をまとめる作業。具体的に言えば、世界各地の様々な労働力をあやつる仕事。グローバルなサプライチェーンの中で作業を取りまとめる。
  • 偉大な合成役:異種のものを繋ぎ合わせて、顧客の為にソリューションを編み出す能力。
  • 偉大な説明役:今までには無かった複雑なものが生み出だされてゆくと、この新しい複雑なものを見てわかりやすく説明する事が必要となる。
  • 偉大な梃子入れ役:物事を端から端までうまく繋ぎ合わせる。自分のビジネスと顧客を結びつける。テクノロジーを梃子に、コンマシーンと人間とがまとまった全体システムの生産性を絶えず向上させてゆく。
  • 偉大な適応者:適応能力の高い多芸多才な社員(バーサタイリスト<何でも屋>)。持ち場や経験の範囲が広がるのみ合わせて、新しい能力を身につけ、人間関係を築き、全く新しい役割を担う。
  • グリーン・ピープル:再生可能なエネルギーにまつわる仕事が巨大産業化する。
  • 熱心なパーソナイライザー:パーソナルな味付け、サービスが満足感をもたらす。工業化やインターネットによって衰退した人間同士のやりとりという技量が、新ミドルの仕事して復活する。
  • 偉大なローカライザー:グローバルな能力を身につけ、現地のコミュニティのニーズに適合させる。中小企業が大きな役割を果たす。

更に続く「理想の才能を求めて」では、子供達がそうしたミドルクラスになる資質をどう磨いていけばよいか、道筋を与えている。

  • 学ぶ方法を学ぶ。好きなものを学ぶのが一番。楽しむこと
  • IQよりもCQ(キュオリオシティ)とPQ(パッション)が重要。熱意と好奇心を持つことが強みになる。
  • 人と上手くやる。人との高度な交流はアウトソースできない
  • 右脳の資質。左脳の資質はアウトソースされる。「ハイ・コンセプト」と「ハイ・タッチ」でハイテクを補う。