青菜

参照:桂枝雀 青菜

暑い時分に植木屋さんが一仕事終えると、その家の旦那さんがお酒を付き合ってくれといって、本音は植木屋さんを労うのだろう、良く冷えた柳陰という焼酎とみりんを合わせたお酒を振舞ってあげる。肴には鯉の洗いだ。植木屋さんはこんな贅沢なものは余程えらい人しか口にできない、と大喜び。
次に旦那さんが青菜を出してあげようと奥さんに準備してくれと言うと、「鞍馬山から牛若丸がでて、名を九郎判官(ほうがん)」と、菜は食ろうてしまってもう無いと伝える。で、旦那は「義経」と、よし判ったという意味のことを答える。
何の会話か全く判らない植木屋さんに旦那が解説してあげると、植木屋さんは随分と感心して早速誰かに試してみたくて堪らなくなる。丁度良くやってきた知人に試すのだが、柳影も鯉の洗いも青菜も無いので替りのものを出すことになる。さて、いよいよ決め台詞という段になると、女房は「鞍馬山から牛若丸がでて、名を九郎判官”義経”」と、植木屋さんの台詞までしゃべってしまったので、上手く決まらなかった。


今日は昨日からの雨模様から打って変わって朝から日差しが強くて気温も高い。そんな時に限って、なんの気まぐれだか、雑草だらけの庭の草むしりをやらないと、という気になり午後から一仕事。庭といっても猫の額程も無いのだが、草むしりを始めるとこの庭がやたら広く感じる。
一段落ついて、冷たいビールと焼酎のオンザロックを飲み、ホウレン草ともやしのごま和えを食べていると、庭も少しはさっぱりしたし、まさに青菜に出てくる植木屋さんになったような気分を味わった。


青菜に登場する二人がどこで酒を飲んでいたのかというと、やっぱり縁側だろう。子供の頃住んでいた家には縁側があって、ちょっとした社交場だったり、休憩するときに家族が集まる場所だったりしたものだ。家にあがっていくとなると用も無いのに上がるわけにも行かないが、縁側だとそんな遠慮は全く必要無い。ただお茶を飲んで一緒にしゃべるだけ、という事が自然に出来てしまう、落ち着ける空間みたいなもんだ。