小林秀雄 現代思想について

テーマは前もって決めていないと言いながら、自身が直に60歳になることに触れ、歳を取ることと思考する事にどんな関係があるかから入っていき、少しずつ話が展開されていく。自分はこう考えるという自説を先人の教えの解釈と対比しながら述べるスタイルもある。一度聞いただけではしっかり話を飲み込むことは難しい。

話の一つに、未開地の娘三人が川に水汲みに行ったとき、真ん中の娘がワニに食われた時のことがある。
我々は、それを合理的に説明する事ができないので、偶然、事故だといって片付けてしまう。一方現地人は双ではなく、ワニは真ん中の娘を食いたかったからに違いない、でなければ川の神様がそう命じたに違いない、と考える。
この違いは何か。現地人が因果律を理解していない訳では無い。現地人はたった一つの経験に背を向けないで説明したいからで、我々が説明できないことは今にわかるだろうと片付けてしまうことに比べると、現地人の方が進んでいると言える、というのだ。

この発想には驚くばかり。物の見方を変えないといけないかな。