雪の瀬川

参考:柳家さん喬 雪の瀬川

本ばかり読んでいるので社会勉強にと江戸に出された若旦那の下総屋つる次郎。番頭さんの画策で知人の幇間が上手く若旦那を吉原に連れてゆく。若旦那はそこで会った花魁の瀬川に一目ぼれして通い詰めはじめると、そのうち遊び過ぎだと勘当される。
若旦那が生活のあてもなくぼんやりしていると、昔の店にいたが駆け落ちして出て行った奉公人と出会い、奉公人が家に一緒に住まわせてくれる事になる。若旦那は奉公人の恩に報いたいと、瀬川に金を用立てて貰おうと手紙を書く。瀬川は若旦那に心を寄せていて身を案じていたものだからその手紙に驚く。そして雨の日に会いに行くと返事を書く。
さて正月も明けたある日、雪が降りはじめ夜になると江戸は真っ白。寝始めた頃、侍の格好に変装した瀬川が本当にやって来る。二人はただただ感動する。そして春になることには夫婦になることを許される。


最終場面の情景描写が実に素晴らしい。ひたすらしんしんと降り積もる雪の穢れなさが、命を賭けてやってきた瀬川の真っ直ぐな想いを一層浮かび上がらせている。こういった趣が深い場面設定は、今の現実の世界でもドラマにしてもまず無い。昔(おそらくは江戸時代)の生活環境とそこでの人情を描く落語は後世に残っていくべき日本の遺産と言っても良いだろう。

ところで、結局今年は横浜では雪は積もらなかった。例年2月頃には一度は雪が積もるものなのだが、たまたまなのかも知れないが、地球温暖化の影響が表れたのだろうかと少し心配な気にもなる。暖冬でもあったらしく桜の開花も例年より早い予想が出されている。


追記:
「雪の瀬川」は三遊亭円生の「松葉屋瀬川」をアレンジして後半だけを扱ったものらしい。雪の瀬川もたっぷり74分もあるのだが、円生の松葉屋瀬川はCDで2枚組みで売っている。
その「松葉屋瀬川」は、講談の「大岡政談」に収められている「傾城瀬川」をベースに落語に移したものらしい。話の最後に夫婦になることが許される、とあるが、ここが大岡裁きなのだろう。